回想40周年・・・

・・・40周年を迎え・・・心の揺らぎを感じながらの、想いで多き旅でした。
         ・・・その旅をかみしめながらしたためたのが以下の寄稿です。

                                2018年6月
                    役員リレーコラム  香川県建築士会
                    調査研究委員会副委員長  入江英樹

「もう一つの巡礼の軌跡・・・イベリア半島から、スコットランドへ・・・」

職住一体を前提としたアトリエ・設計事務所という生活に憬れての還暦までの設計人生は、まさに“感謝”の一語につきます。そして数年前を境に、これからの納得のいく人生というものを手探りしながら大きく舵を取ってきています。

 昨年は、私の設計人生40周年を迎えて自分を見つめ直す意味もあり、春季研修は新教皇就任後のヴァチカン等、秋季研修はイスラムの色濃く残るレコンキスタのスペインから、そして先日は、スコットランドのゆったりとした空気に浸ってきました。生活と設計(意欲の湧く仕事)とのスタンスを模索している自分にとっての、心の置き方と新たな充電も兼ねて、私にとってここは意味のある場所に思えました。

 スコットランドは以外に暖かく、なだらかに何処までも続く草原に点在する樹木の不思議に美しい樹形と、石積みの外壁、石葺きの屋根等の織り成す風景、穏やかな空気感に癒されながら、あれこれ想いに浸っていました。

 ここでの、一つの目的はエジンバラ南郊… ロスリン礼拝堂(ゴシック様式 グラストン・ベリー「イングランド最初のキリスト教伝来の地でもあり、巡礼地の要…」を通る南北子午線(ローズライン)を名前の起源とする)の 象徴造形と、祈りの空間を体感してみることでした。

ロスリン礼拝堂を背景に・・・

十字型の内陣中央に塔のあるシンプルなシルエットの建築物ですが、未完のまま現在に至っているとも言われています。慎ましい木の扉の中は小さな、そして異様で圧倒されるような空間でしたが、不思議に自然に溶け込めました。

 異教の伝承に基づく象徴が、石材のあらゆる面に気が遠くなるほど数多く刻みこまれている。無数の石塊が突き出て表面を型造っているアーチ型通路は「ダ・ヴィンチ・コード(ダン・ブラウン著)」最終章で一躍知られるようになったが、ケルト、テンプル騎士団、フリーメイソン、五芒星 そしてソロモンの紋章としても知られる六線星型等、様々なモチーフの彫刻等による、あまりに異端的な装飾空間にはため息が漏れるほどでした。
 
 装飾、それも過剰な装飾が派生しもたらす空気感といったものに興味のある私にとって特別な“場”でしたし、地下室での“場”空間も体感できました。

 多くの幾何学文様等が織り成す不思議な表情は、フランク・ロイド・ライトの装飾を多用したディテールにも想いが及び、セントポール大聖堂(ロンドン・バロック様式 ダイアナ元妃の婚礼も…)の内陣の渦を巻くような捩じった柱、更にはポルトガルの装飾様式も脳裏に浮かんでいました。
 
 このコラムの原稿に向かいつつ、TVモードにした脇のパソコンでは、世界卓球・ポルトガルグループリーグ戦…丹羽・フレイタス、松平・モンティロ戦から、水谷のフォアハンドカウンター、フレイタスの息を呑むカウンター返し、ゲームポイントからの胸のすくチキータレシーブ、ラリー等…アスリートのすばらしい反応の応酬につい手が止まってしまいがちでした。

 そのポルトガル戦で湧いていた会場は、懐かしく特に印象深い国立代々木競技場でした。瀬戸内の丹下建築展(於・香川県庁舎建築ギャラリー)等にも、つい想いを馳せながらのゆったりした時間を楽しめました。

 イベリア半島のマヌエル様式(ポルトガルゴシック後期様式)の壮麗・華麗な装飾建築が、ロスリンにオーバーラップして思い浮かべながらの…又、ロスリン礼拝堂の不思議な余韻に浸りながらのポルトガル観戦でした。

 再来週には、恒例の寺社巡りの一環としての熊野本宮大社、熊野古道(杖に頼りながらですが…)の散策がてら、これからの納得のいく設計人生を手探りしながら、今年はいくつ良い思い出を創れるかを楽しみにしています。

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