真宗寺院 西坊 門徒会館
宗教空間・境内における素材の振動・空気感の模索・・・
水盤を模した敷き込み砂利から醸し出るような静寂感と、広がりを持った緊張感・・・境内への滲み出るような空気感を意識しています。
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「福寿無量院 天文山 西坊 龍元寺」…その歴史・変遷には、本堂の基本構想、実施設計、工事監理を通して大変重いものを感じてきました。
文献(西坊縁起等)による「補陀落渡海」思想と、その実践者である西坊開基・正慶上人の執念とも言うべき、求道に対する激しいまでの思い入れを知るにつけ、宗教建築・宗教空間に対する設計者としての立ち位置に、改めて目を醒まさせられる念いがあります。
原風景としての海
讃岐最古の古代寺院でもある、宝幢寺(遥か藤原宮の供給瓦窯でもある 三野宗吉瓦が使われていることでも有名)からの由緒ある塔頭としての、「坊号」を冠している西坊、時代を重ねた新しい造型の古刹としての佇まいをどう求めるか?
その門徒会館の設計にあたり、本堂と並列となる伽藍配置に対しては、特に慎重に、”景”としてのシルエットもベースとした造型上の配慮が強く求められると感じています。
宗教建築としての、この”場”における精神性の表現とは……
を特に意識しています。
・・・イメージ・・・
- 現代の数奇屋のイメージ
フォルムとしては、本堂よりあくまで低く、境内には柔らかに押えられて透明感を持った開放性を…
併せて、豊かな内部空間の演出…
- 水盤(海)をイメージした砂利の敷き込み…
リズミカルな列柱の足元の緊張感と、本堂にも組み込まれている土間の敷き瓦と相まって境内の景観へいかに絡ませるか・・・
それを覆う軒樋のない深い庇の屋根の造型イメージ・・・
・・・銅板(銅メッキステンレス)一文字葺きに重なる大屋根の瓦葺きでの整え方。
・ 豊かな内部空間のイメージとしては
弁柄よりも、朱(水銀の酸化色)塗りの造作材(柱、内法材から障子組子まで…)と、黒塗りの縁甲板、金属箔(アルミ箔等)のフスマ紙、等のよる、空間表情への配慮。
・ 耐久性を要求される鉄骨構造体は、本堂と同じ溶融亜鉛メッキ(ドブ付けメッキ)処理。
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……今後の……山門、観音堂、西浄等の改修方法、参道との軸線、からみの捌き方等、
寺院・境内空間の特殊性を考慮した計画が続いています。